Self Defense
邂逅からの創造、そして愛着へ
〜懐かしさが新しさへと発展する、重なる技の先に生まれた機能服〜
この数年、‘日本’そのものと向き合い、その要素をリスペクトしながら今まで見たことのないパターンやディテールを追求してきた先、行き着いたのは‘中国’の存在でした。
自分と中国との縁は浅からぬもので、若い頃にはあることがきっかけで服づくりの手伝いをしたこともあるほどです。詳しくは「中国のはなし」でも触れているので、興味があればぜひ。
でも、一番のつながりはやっぱり功夫(カンフー)映画。 幼いころ、カンフー映画のスターたちが繰り広げる生身のアクションに目を輝かせ、食い入るように見つめ、夢中になってマネをしたのはいい思い出です。
そんな幼い日、僕と弟のそばではいつも母がお針子の仕事をしていました。 冬も間近なある日のこと、いつもの仕事の合間に母はひと針一針手縫いでパッチワークのサンタクロースを作っていたことがあります。弟に贈られたそれは、当時の自分の目には「すごい手間をかけた、技術が詰まったぬいぐるみ」に見えたものです。
こんな何気ない日常が思い起こされたのは、まさに母お手製のパッチワークサンタクロースが倉庫から出てきたから。
もう何十年も前に作られたそれは、すっかり色褪せて古びてしまってはいるけれど、どうしても簡単には捨てられず、いつまでも手元に残したいと思うほどです。 「丁寧に作られたものはどんなものも時代が経っても残しておきたい」。そう感じるのはやっぱり人情なのでしょう。
そんな古い記憶のピースひとつ一つが僕の頭の中で再び出逢い、自分が持つファッションの知識や歴史の中で確立されてきたテクニックやメソッド、生地の可能性、そして、ちょっとした遊び心と想像/創造力とが掛け合わさった結果、新しく生まれたのが今回発表したコレクションです。
きっと、しっかりと考え尽くして丁寧に作り上げた唯一無二とも言える一着を作ることができれば、簡単に“消費”されることなくずっと長く愛着をもって着続けてもらえるはず。 そういう考え方が、いまの時代のファッションに求められていると思っています。
だから、
どこか懐かしく、しかし新しく、持ち主の心を掴んで離さない。日々を過ごす中で、一番近くであなたを守る心地良い服を作ろうーー
これが、yoshiokubo 2023/2024 Fall/Winterのコレクション「Self Defense」のコンセプトです。
ぜひ動画でその世界観をご覧ください。(久保嘉男)
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