久保です。2026年8月31日、ようやく「yoshiokubo 2027年春夏コレクション」をRakuten Fashion Week TOKYOにて発表することができました。ご来場くださったみなさん、改めてありがとうございました。
今回はそんなショー当日の裏側を振り返ります。
ショーの構成を考えるのはいつだって難しい!
~“実験的な見せ方”を繰り返した先に見出したスタイル~
もう何度もショーをやってきましたが、いつだって一番の課題は、「どうしたら自分が作った服を見てもらえるか」ということ。
それを実現するためにショーの構成を考えるのですが、イメージを現実の世界に落とし込んでいくことは一筋縄ではいかないことが多々あります。服の反省点や見せ方、ある程度は妥協しないといけない部分などを考えると…今回は80点ぐらいかな、というのが自分の感覚です。
振り返るとここ最近は、吉本新喜劇とのコラボ、老舗遊園地「浅草 花やしき」のランウェイ化、ファッションとブレイクダンスを融合させた「Red Bull BC One」と、かなり実験的な見せ方をしてきたと思っています。
それぞれ意味はあって、特にRed Bullとのコラボでは「あるシーンの中でこの服はどう見えるか?」を実際に見てもらうためにどうすればいいかを考えた結果として“その場面を再現して見せる”という取り組みをしてみました。そういう意味では決して「ただ話題性のためにおもしろそうなことをやった」ということではなかったのですが、「もっとちゃんと服を見たい」というご意見をいただくことも…。
確かにその意見はありがたい。
ということで、そこから、「自分としても20年ちょっとの経験を経て、やっぱりファッションって、服だけじゃない。雰囲気だったり、ノリだったり、あるいはPRの仕方であったり、それこそ広告やイメージだったりだとかがすごく服に影響を及ぼすものだな」という考えだったり、一方で、「自分の服作りは新しいディテールを服に落とし込んで“おもしろい服”を作るというのが根本的なスタートで、いろんな見せ方もしてきた。けれどその先はやっぱり、自分が作った服だけをポーンと見せて『うわ、おもしろい服!』と思ってもらう、そんな服を作って見せないといけない」という思いが深まって、今回のショーの構成が始まりました。
その意味で、今回は僕が得意としていて昔からやり続けている流線型の切り替えやカッティングといったyoshiokuboの特徴になっていて、みなさんに受け入れてもらい、買ってもらえている表現で作った服をより集中して見てもらえるようなショーになったかと思います。
久保嘉男が解説する、yoshiokuboのショーの解説
もう少し舞台、ショーの“解説”をしていきましょう。
今回の舞台のキーは、真っ白な床材とそれをしっかり反射する照明の光量! レベルを50から80までグッと上げていってパキパキに白い空間を作り出し、洋服を纏うモデルが浮き立つような雰囲気にしたいと考えていました。これは照明スタッフの方と調整を繰り返して当日はパーフェクトな状態になったと思っています。

もうひとつ、ファッションショーは「一種のエンタメである」というのは間違いないので、見ている人に飽きさせない、ダレてしまわないようなリズム感やテンポについてもかなり意識を割きました。
ショーの流れの関係上、見ている人が次々に出てくる服を見るタイミングはせいぜい9秒~10秒ぐらい。それを超えると「次は?」と間延びして感じてしまうのではないかと僕は考えているので、ショーが始まったすぐの時から途中でほんの1秒だけタイミングを変えてみました。ほんのそれだけで心地よく音楽ともマッチしたから、そこは最後の最後で調整してよかったな、と思っているところです。
服をずっと見続けるっていうのは意外と飽きるというか、何かしらの変化が欲しくなるものだから、次から次に来ないとスマホに目を向けられちゃったらいけないのでね。

ヒカリエのようなフラットな舞台では、観客とモデルが近すぎて現実っぽさが出てしまわないようにすることも重要なポイントです。今回は、床の端から50cm外に椅子を並べ、床の端から1m内側をモデルが歩くような物凄く細かい空間設計もしていました。そういう配置の妙で緊張感が引き立つようにするのも見せ方としては重要なことなのかな、と改めて感じたものです。

試行錯誤で舞台構想が形になり、スタッフの努力で無事に完成する
最後まで苦心したのはショーの最終盤、足跡の演出でした。
構成を考えていた当初はモデルが舞台に出ていく寸前に靴の裏にインクを塗りたぐって、歩く道筋に足跡がつくような感じにしたかったのですが…実際にやるとなると意外と足跡がキレイにつかない、途中で掠れたり消えたりして観客が見る場所によって見え方が狙い通りにいかないことがわかりました。
で、いろいろと意見を出し合って考えた結果、「事前に床に蛍光塗料で足跡をつけておいてショーの最後、暗転した瞬間に浮かび上がるような仕掛け」に路線変更することに。特別な蛍光塗料で、肌に付いても大丈夫、とのこと。これが手配できたのは大きかったです。
ただ、足跡の演出をするためにはショーが始まるまではできる限り室内の光量を下げた状態を保たないと「ネタバレ」してしまうことがわかり、来場された方をお席に案内するまでには足元の配慮をお願いすることになりました。席を探すのに苦労された方もいらっしゃったかもしれません。
ショーの最後にしっかり足跡が浮き上がって「おっ」という雰囲気になった時、裏側のスタッフたちは「ちゃんと狙い通りになってよかった!」と一安心する、そんな仕掛けでした。

そういう感じでほとんどの人が気づかないようなところにいろんな“緻密な狙い”があったので、スタッフには「お客さんが入ってきても絶対に舞台の近くを歩かせない! 足跡の仕掛けの部分は踏ませない! お客さんの足元はペンライトで照らしてもいいけど足跡の仕掛けの部分は照らさない!」と、いろいろ細かい注文をつけることになってしまいました。
そうしてすべてが計画通りに進んでいくのがわかると、やっている側はワクワクが止まらなくなってきます。モデルが順番に出てくるタイミングやテンポ、音楽との融合、ばっちりハマったライティング、これらが融合して目の前で繰り広げられるショーに一瞬でも没入してもらえるのがショーをやる側の腕の見せ所だと思っているので、今回もいろんな反響をもらえて嬉しい限りです。
こういうショーの“考察”なんかをしてもらうのももしかするとファッションショーの楽しみ方のひとつと言えるかもしれません。
蛍光塗料を使いたい!
ショーの締めくくりはデザイナーの挨拶ということで、今回も何かインパクトを残したいと考えていたのですが、ふと思いついたのがとある芸人さんがやっていたメイクのコント。
「いま、ここにちょうど蛍光塗料もある! あれをやるしかない!」
ということで、暗転して蛍光塗料の足跡が浮かぶ舞台に、蛍光塗料で顔にメイクを施してもらった久保嘉男が登場する、という演出をすることにしました。

資生堂から来てくれたメイクスタッフの方もまさかファッションショーの最後にデザイナーに蛍光塗料でメイクするなんて想像していなかったでしょうから、面食らったかもしれません。Spring/Summer 2027 Collectionのキーモチーフが「骨」なので、顔面骨をなぞるように仕上げてもらいました。
暗闇に浮かぶ久保嘉男の顔面骨はさぞかしインパクトがあったと思います。
せっかくなのでここに写真も載せておきましょう。

実際に服のディテールまで見てもらいたい!
ショー当日の話を聞くと、「もう一回見返してみたい」という方もいらっしゃるかもしれません。ぜひ何度でも見てもらえたら嬉しいです。
動画はこちらから。
「ショーの雰囲気全体もいいけれど、服のディテールが見たい」という方には、直近では9月12日(土)・13日(日)の2日間限定で、どなたでもご来場いただけるプレオーダーイベントを開催します。約半年後の発売を控えたコレクションのフルラインナップを見られるうえ、ショーには登場しなかったアイテムも揃える予定なので、ぜひお越しください。
日時
2026年9月12日(土)・13日(日)
12:00~18:00
場所
groundfloor Gallery
〒153-0061 東京都目黒区中目黒1-8-1 2F