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大興奮!一夜限りの「吉本新喜劇ファッションショー」を振り返る



久保です。
2024年9月4日、“あの”吉本新喜劇と一緒に、Spring / Summer 2025 Runway Showを開催しました。このコラボは大阪出身である僕が長年温めてきた構想を、20周年の節目の年を記念して実現させたもの。通常のファッションショーとは一味違う、モデルもいつもと違う、とにかく“めっちゃおもろい”ショーについて振り返っていきます。

吉本新喜劇、お笑い文化があったから

今回のショーを語るにあたって、僕の子どもの頃の話を少しだけ。

僕らが小学生だった頃、土曜日は4時間目まで授業があり、それが終わって家に帰ると“いつもの昼ごはん”が用意されていて、食べ終わって一休みしたあと遊びに出かける、というのが毎週のルーティーンでした。 土曜の昼ごはんメニューはだいたい定番化していて、うちの場合はお好み焼きと焼きそば、たまにモダン焼き(お好み焼きに焼きそばの麺がサンドされている“モダン”なお好み焼きのこと)が出てくることもあったと思います。

昼ごはんを食べながら見るテレビ番組は決まって「吉本新喜劇」。日本全国、その時間に放送されている子どもも楽しめるテレビ番組はこれしかないと信じていたし、絶対に見るというより、「見て当たり前の番組」という位置付けだったように記憶しています。

そういう意味で、大阪―少なくとも僕の周りのエリアでは―子どもの頃から吉本新喜劇や“お笑い”は自分の生活一部になっていたし、成長してもずっと心の中の切り離せない存在であり、今でも生き方にも深く影響していると感じるものです。

大阪弁ではクリエイティブなことや、誰も目にしたことがない、聞いたことがないようなことを「おもろい」と表現するし、大阪には、他人と違うことをすると「君、おもろいな! 吉本の芸人さんになれるで」と褒める文化があります。 この言葉をもらうのは子どもにとってはステータス。「他と違うことをすることは良いことだ」という気持ちを育み、他と違うことをしようとする自分への自己肯定感を高めてくれました。

吉本新喜劇があったから、のびのびと自分の“色”を出すことを恐れずにいられたし、「おもろいこと」をしても良いと感じさせてくれたのは吉本新喜劇であり、吉本の芸人さんの存在があったから。 そして、ファッションデザイナーとして「今まで見たことのないパターンやディテールを追求して、誰も見たことがない服を作りたい」というブランドのアイデンティティにも深く繋がっていると考えています。

だから、吉本新喜劇と20周年を記念するショーを「楽天ファッション・ウィーク東京(東コレ) 」の一環として開催できたのは「感無量」の一言に尽きるのです。

プロの脚本家はやっぱりすごい! しか言えない

今回、東コレの期間だったこともあり、他のブランドもショーを開催していたけれど、「その中でもyoshiokuboのショーは異色だった。あんなショーは見たことない!」という嬉しい反応をいただくことができました。「見たことがない」というのはファッション業界では最上の褒め言葉のひとつなので、本当に誇らしかったし、やってよかったと思っています。

そういうショーにしてくれたのはもちろん吉本新喜劇のみなさんのおかげ。特に脚本家の方には驚かされました。

最初の打ち合わせで、「うどん屋から始まって、『ショーを見に行こうか』みたいな流れでできたら…」とイメージをお伝えしたら、出された脚本の内容は幼い頃に見ていたあの吉本新喜劇の中にショーが自然な流れで組み込まれていたんです!  吉本新喜劇流のファッションショーの解釈がそこにあって、「うわー、プロってすごいな!!」の言葉しか出ませんでした。

笑いを生み出すエネルギーはすごい!

「脚本は間違いなくおもしろい、けれど、あまりに前代未聞な取り組みなので観客がついてきてくれるか…こればっかりは舞台の幕が上がらないとわからない」 そう思いながら迎えた当日。


吉本興業の劇場「ルミネtheよしもと」の485席いっぱいの観客たちは待ち時間の間、きっと「どういうショーになるのか?」と思っていたはず。通常のショーではランウェイを挟んで両側にずらっと席を並べて観客が向かい合うように座り、歩いてくるモデルを見るものなので、観劇形式の座り方すら珍しいものです。 幕が開いてもなかなか状況が受け入れられず戸惑うような、イマイチ盛り上がりきらないような微妙な雰囲気が漂っているようにも感じられました。

そこで出てきたすっちーさんの掴み! 間寛平さんのボケ! 一気に会場が前のめりになるようなワクワク感が高まっていくのが肌で感じられるほど。 そして、新喜劇定番の借金取りの登場、「乳首ドリル」炸裂などのネタの応酬が続き、手を叩いて爆笑する人まで! セリフで、動きで、アドリブで、笑いがすごいエネルギーの塊になるような様子を袖で見ていると今までのショーでは感じたことがないような気持ちになっていきました。

会場にはイタリアからファッション界の重鎮たちがジャーナリストと一緒に来ていましたが、言葉が通じず、通訳さんがいたとしても「おもしろさ」が伝わりづらい中で、全力の動きだけで笑わせようとする珠代姐さん!  最終的に笑い出す重鎮らを見て周りの観客もつられて笑い出す、というやり取りが繰り広げられていました。

その一連の流れを見て、「芸人さんってすごいな。この人たち、本当になんでもできるんやろうな。これが一流のプロなんや。自分にはようできんわ」と鳥肌が立つ思いでした。

「自分には服は作れるけど、芸人さんにはなれっこない」。そう思い知った瞬間でした。

2025年春夏コレクション「守・破・離、自在」とショーと

2025年春夏コレクションのテーマである「守・破・離、自在」。
過去の全力を基盤に、自身のアイデアを深く掘り下げ、そこから生まれる独自の着眼点をもとに服作りを展開したコレクションとして発表しましたが、奇しくも今回のショーもまさに型破りで、型から離れ、自在に魅せるような、そんな内容になりました。

10年前からいろいろと考え抜いて、新しい、おもろいことをしてきたと自負しているけれど、今回こそそういうものができたと思っています。

残念ながら一夜限りのショーでしたが、きっと僕だけでなく見てくれたみなさんの記憶に深く深く残るはず。次回も同じくらい熱量を共有できるショーができるように、また新たな可能性を探していきます。

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