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ビビった話シリーズ#1

ファッション業界に身を置いていると、この業界ならではといえるサプライズに遭遇することも多々あるもの。今回は、久保嘉男がデザイナー人生において、「これはビビった!」と思う “強烈”な3つのエピソードを紹介する。(文:松下弥郎)

■ジョルジオ・アルマーニとの邂逅

つい最近、ヴァージル(・アブロー)が亡くなりましたが、その話を聞いた時に思い出したことがあります。ジョルジオ・アルマーニ氏に招待されてミラノでコレクションを披露した話を少し前にしましたが、その時に一緒に招待されていたのがヴァージルと、「ユニクロ」との協業で日本でも知られるようになったJ ・W・アンダーソン。17年の秋冬コレクションのシーズンで自分も非常によかったシーズンでした。 (関連記事:久保嘉男が海外でショーを開く理由

そのイタリアで思い出深いのは、自分史上最高にビビった出来事です。安藤忠雄さんがデザインした、アルマーニの帝国のようなどでかいビルで展示会をしていた時のこと。アルマーニのビルなので当然ジョルジオ・アルマーニはビル内のオフィスにいるのですが、本人が新人クリエーターの展示会に顔を出したことは無かったらしいのです。少なくとも過去2年は顔を見せなかったそうです。

で、同行したレボリューションPRの田中君が日本酒の「獺祭」を持参して、ツテを辿って渡した効果なのか、なんとある日、本人が降りてきてくれたんです。もちろん会うのは初めてですが、自分の作品を絶対見てもらいたかったんで気分はアガりましたね。例えはあれですが、駆け出しのコメディアンがビートたけしさんに会ったようなもんです。生きる伝説ですから。


自分の服を見ながらちょこちょこ質問をしてもらって、僕も英語で答えたりはしていたのです。彼はイタリア語で通訳に色々と話してくれていたのですが、あの青い瞳で目を見て喋られると何を言っても全て見透かされているような気がしたんです。自分の作品ですから、なんぼでも話せるはずなんですが、その内容が何か嘘くさいように思われてるんちゃうかと思って、どんどん言葉が出て来なくなってきてめちゃくちゃ焦りました。

しかも、なんか怒ってるよう仕草をする。何かと思ったら、その時、全身リアルファーの作品を出していたんです。動物福祉に配慮するということで、ジョルジオ・アルマーニはリアルファーの使用を止めると宣言した後だったからか、その事を言っているんだろうなと後で気付きました。

ひと通り見てもらい、最後に写真を一緒に撮ってもらったんですが、この時も、変な間があきまた焦りました。本人を待たせるわけにはいかないのに、カメラマンは居ないし、携帯もないし、同行していた河野君も田中君もその場にいなくて、「はよ持ってこんかい!」と心の中で怒鳴りながら待って、ようやくツーショットを収めることができました。 まあ、とにかく写真が撮れたんで嬉しかったし、自分の墓にまで持って帰りたいぐらいです。SNSに投稿したら、いいねが1000ぐらいつきました。

■オーディション会場が一触即発の状態に!

別のビビった話は、11年の春夏シーズンの時。このシーズンはキャスティングを斬新なものにしたくて、マライア・キャリーのSPとか本物のヤンキーとか、アメフト選手やボディビルダーなどに声をかけてオーディションに来てもらいました。オーバーサイズを大きい男性が着るというのをやりたくて。 当時の狭いビルでオーディションをやっていたのですが、日本人のヤンキーと黒人のSPが現場で揉めてしまって。ちょっと焦りました。

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■え、そこで打ち上がるん!?

時間で焦ったこともありました。東京での最後のショーの時です。場所に選んだのは、秩父宮ラグビー場で、その時は隣り合う神宮球場でセリーグ覇者の地元・ヤクルトスワローズの日本一がかかった日本シリーズの7戦目の真っ最中でした。もし優勝したら花火が上がるとのことで、これを演出に組み込んだら凄いんちゃうかと思って演出家に相談をしていて。

ギリギリまで客入れをして、開始まで引っ張って、引っ張って待っていると嘘みたいなタイミングで花火がどーんと上がったんです。この時も別の意味で焦りましたが、すごい演出になったなと。もう、人生残りの運を全部使ってもうたんちゃうかと心配になったほどです。

SPRING/ SUMMER 2013コレクションはこちらからご覧いただけます

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